【解説】バーナム新英政権の最初の24時間……解任、サプライズ人事、政策

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ジョー・パイク 政治担当編集委員
20日正午過ぎにイギリスの新首相となったアンディ・バーナム氏は同日午後、キア・スターマー前首相を支え続けた閣僚数人に電話をかけ、これまでのポストから解任すると告げた。他方、ジョン・ヒーリー氏は首相官邸に来るよう言われた。
ヒーリー氏はその時、議会の議事堂にいた。パブの隣にある裏口を出て、一人で官邸へ向かった。スーツ姿に、数ある赤いネクタイの内の一つを締めていた。
ロンドンの官庁街ホワイトホールを歩きながら、「会議に向かうところだ」とヒーリー氏は軽く微笑みながら言った。
彼がその後、財務相に任命されたのは、本人にとっても、労働党の同僚たちにとっても、イギリス国民にとっても予想外のことだった。
就任以来、バーナム氏はさまざまな発表を次々と繰り出している。ヒーリー氏の任命もそうだし、家庭の光熱費に対する付加価値税(VAT)の税率を10月から引き下げると21日朝に発表したのもその一つだ。自分たちは猛スピードで邁進(まいしん)するのだと、新政権は示そうとしている。少なくとも今のところは。
最大野党・保守党は光熱費減税を支持しているものの、その財源をどうするのかは疑問視している。
ヒーリー新財務相は5週間前、防衛予算をめぐり国防相を抗議辞任し、スターマー氏の首相としての権限に打撃を与えた当人だ。
同様に、今年5月の地方選大敗を受けてスターマー政権を次々と去り、スターマー氏に痛手を負わせたウェス・ストリーティング氏は新しい国防相に、ミアッタ・ファーンブレ氏は新しいエネルギー担当相になった。3人は21日の初閣議で顔をそろえた。
閣僚として時の首相に造反した3人は、それによってバーナム氏の政権獲得を早めたことへの論功行賞として、閣僚ポストで報われたのだろうか? おそらくそうだろう。
しかし同時に、この3人は政府と政界を巧みに渡り歩くことのできるベテランで、複雑な重責が伴う要職を担える実力者だともみられている。

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ヒーリー氏が政府内で2番目の要職に昇格したことを、国防省の幹部たちは歓迎している。防衛費増額を重視する人物が財務省にいるというのは、国防幹部にとっては安心材料だ。
「我々にとっては素晴らしいことだ」と、国防省関係者は話した。
しかし、この関係者は、ヒーリー氏が国防相として復帰しないことにもほっとしているという。
「戻ってきたらとても困ると、我々は心配していた」とこの関係者は話した。「扱いにくい人なので」。
ヒーリー氏を財務相にするのは賢い選択だったと、保守党ベテランの間でさえ言われている。
「理由はいくつかある」と、保守党の閣僚経験者は説明する。「彼はエド・ミリバンドじゃないし、攻撃しにくいし、財務省の事情にも精通している」。ヒーリー氏はトニー・ブレア政権で5年間、財務省所管の閣外相を務めていた。
バーナム氏を支持してきたアネリーゼ・ミッジリー院内幹事長は、労働党の下院議員たちが政府に忠実でいるよう、統率しなくてはならない。そこには閣僚を解任された人も含まれるだけに、難しい仕事だ。
首相交代に伴い閣僚ポストを失ったダレン・ジョーンズ前首席首相秘書官は早速、バーナム政権が発表した光熱費減税について、政府がいう財源措置を公に批判した。つまり、同じ党内でも全員がおとなしく政府に従うわけではないという兆しがすでに見えているのだ。
労働党議員の一人は、バーナム氏に解雇された閣僚たちは、三つのグループに分けられると話す。
「政治的な理由で辞めさせられた人もいれば、ただ単に能力が足りなかった人もいる。議会労働党の中で嫌われていた人もいる」
政界の舞台裏では、バーナム氏が世論調査での支持率上昇を利用して、解散総選挙に挑むのではないかと大勢が取りざたしている。
それは、野党リフォームUKのナイジェル・ファラージ党首が望むものでもある。ファラーージ氏は、バーナム首相は国民の信任を得ていないのだから、総選挙が必要だと主張している。
しかし、ファラージ氏は自ら下院議員を辞任したことで仕掛けた補欠選挙を控えている。政治資金や便宜供与についても疑惑が相次いでいる。そのため、リフォームUK内では、バーナム氏が素早く動いてすぐに総選挙に持ち込んだ場合、ファラージ氏が首相になる絶好の機会を逃してしまうのではないかと懸念の声が出ている。
「解散総選挙を、我々は本当に心配している」と、リフォームUKの関係者はにやりと笑いながら言った。
「だからこそ、我々は総選挙を要求している」

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中央政界の全政党は、解散総選挙が実施された場合に備えて計画を立てている。
「準備を始めた」と、野党・自由民主党のベテラン補佐官は話した。
バーナム首相は、すぐに解散総選挙に向かう可能性を否定したかのように見える。
確かに、総選挙で落選する可能性がある労働党議員は、解散となれば強く反発するだろう。
その一方で、総選挙に臨んで勝利すれば、新首相は国民の信任を新しく得た形で大胆な政策も打ち出せるだろうし、任期5年の足場を固めることもできる。
「経済的に厳しい事態が迫っている」と、前出の保守党閣僚経験者は言う。
「問題は、(バーナム氏が)それに対してどれだけ先手を打てるかだ。選挙に挑むのか、ゴードン・ブラウン政権のように緩やかに衰退していくのか、首相は選択を迫られている」
ブラウン元首相は、トニー・ブレア氏が2007年6月に首相を辞任した後、党首選を経ることなく労働党党首と首相になった。その後、解散総選挙に打って出ることを検討したものの、最終的に断念したことから、「ひるんだブラウン」とあだ名をつけられた。
しかし、ブラウン氏は我慢強く慎重に、そして狡猾(こうかつ)と冷酷を組み合わせることで、じわじわと首相官邸に上り詰めた人だ。それに対し、バーナム氏の急速な出世はもっぱら、ひとつの重大な選挙に賭けて、そして勝ったことで実現した。
メイカーフィールド選挙区での補選で勝ち、そして労働党の党首争いで勝ったバーナム氏は、今一度、総選挙という賭けに挑もうとするだろうか?












